いよいよ今月、5月25日から「事業性融資の推進等に関する法律」が施行され、「企業価値担保権」が導入されます。
「企業価値担保権」は、不動産担保や経営者保証に過度に依存せず、会社の事業そのものの価値や将来性に着目した新しい担保制度です。なお、企業価値担保権を設定できるのは、会社法上の会社(株式会社・合名会社・合資会社・合同会社)に限られ、個人事業主・一般社団法人、一般財団法、医療法人・学校法人・NPO法人等は対象外です。
1. 事業性融資推進法とは?
事業性融資推進法は、会社の事業内容、将来の収益力、キャッシュフロー、成長可能性など、いわゆる「事業性」を評価して融資を進めやすくするための法律です。
これまでの中小企業融資では、銀行が重視するポイントとして、
・不動産担保があるか?
・経営者保証を取れるか?
・過去の決算内容がどうか?
・保証協会が使えるか?
といった要素が融資審査上、大きな比重を占めてきました。もちろん、これらは今後も重要な要素ではあります。しかし、新しい制度では「会社がこれから稼ぐ力」や「事業全体の価値」にも、より目を向けやすくなります。
これは、スタートアップ、事業承継、事業再生の局面や、通常期においても大型の設備投資をして事業を伸ばしたい会社にとって、資金調達の選択肢が広がる可能性があるということです。
2. 企業価値担保権とは?
企業価値担保権とは、端的に言えば「会社の事業全体の価値を担保にする制度」です。従来は、不動産や売掛金など、個別の財産を担保にしましたが、企業価値担保権は、会社の総財産を一体として担保の対象にします。法律上も、会社の総財産、将来において会社の財産に属するものを含むものを、企業価値担保権の目的とすることができるとされています。つまり、目に見える資産だけではなく、例えば、
・会社のノウハウ
・ブランド力
・取引先との関係
・将来のキャッシュフロー
・事業としての収益力
といった、決算書だけでは見えにくい価値も含めて、事業全体を見ます。つまり、「担保に出せる不動産がないから融資は難しい」という会社でも、事業に将来性があれば、銀行が融資の可能性を検討しやすくなる制度だと言えます。
3. 経営者にとってのメリット
中小企業経営者にとって期待されるメリットは、主に3つです。
① 担保や経営者保証に頼らない融資
十分な担保がない会社や経営者保証を避けたい会社は、無担保の制度や経営者保証を不要とする制度を活用するか、プロパー融資において、それを許容できる財務内容を求められるなど、選択肢は限られていました。企業価値担保権は、不動産担保・経営者保証中心の融資慣行を補完する選択肢になる可能性があります。なお、企業価値担保権を設定すると、粉飾等の例外を除き経営者保証の利用が法律上禁止されます。
② 銀行が過去だけでなく未来にも着目
この制度では、金融機関が会社の事業価値や将来キャッシュフローに関心を持つことが期待されます。つまり、銀行との関係も、過去の数字だけでなく、事業計画、資金繰り、成長戦略、改善計画など、未来を共有する関係になっていきます。
③ 事業承継・再生局面で活用の可能性
事業承継や事業再生の局面では、過去の決算だけを見ると融資判断が難しいケースがあります。事業再生においては、特に厳しい財務状況ですので、それが顕著です。しかし、今後の改善計画や収益回復の見通しがしっかりしていれば、事業全体の価値を踏まえた融資の検討できる可能性があります。
4.中小企業が準備すべきこと
企業価値担保権が導入されても、すぐに全ての中小企業が簡単にそれを活用して融資を受けられるわけではありません。
金融機関側も、新しい制度に対応する体制、審査方法、モニタリング方法を整えていく必要があります。また、企業側も、事業の将来性を説明できる資料が必要になります。具体的には、
・月次試算表
・資金繰り表
・経営計画書(経営改善計画書)
・経営計画の概要書
・損益予実管理表
などを整備し、銀行と定期的に共有する体制を作ることが重要です。会社側が自社を数字で説明できなければ、銀行は将来性を十分に判断できず、この制度を使うことは難しくなります。
今後の銀行取引でにおいては、自社を数字で説明できることが重要です。例えば、上記資料と共に下記のような内容を伝えられれば取引銀行の御社への理解は深まることでしょう。
・どの事業で利益を出しているのか
・今後どこに投資するのか
・資金はいくら必要なのか
・返済原資はどこから生まれるのか
・資金繰りはいつ苦しくなるのか
・どのように改善していくのか
今後より一層、経営者自身が自社の数字を把握し、資金繰りや経営計画を銀行に説明できることが求められます。
弊所は、会社の実態把握、経営計画策定、予実管理のご支援を得意としていますので、お気軽にご相談下さい。