金融庁が定期的に更新している「『経営者保証に関するガイドライン』等の活用実績について」という資料があります。これが7月31日に更新され、その内容を確認しますと民間金融機関が新規に行った融資のうち、「経営者保証に依存しない融資」の割合は2025年度の実績で55.7%でした。2015年度の12.2%から大きく上昇し、件数は約122万件に達しています。
ただし、この数字は「新規融資の件数」に占める割合です。既存借入を含めた融資全体の半数以上で保証が外れているという意味ではありません。
経営者保証を取らない融資が一般的になってきているとは言え、まだまだ経営者保証を付けて融資を受けている会社が多いのが現実でしょう。今回は、経営者保証を付けないでもよい会社になるためには、どうすれば良いかについて、改めてご案内します。
1. 保証を外すための3つの要件
経営者保証を外せるかどうかは、銀行との交渉力で決まるものではありません。重要なのは、社長個人ではなく「会社そのものの信用力」で融資できる状態をつくることです。主に確認されるのは、次の3点です。
①法人と経営者個人が明確に分離されている
会社から社長への多額の貸付金や仮払金がなく、個人的な支出を会社の経費にしていないことが重要。
②会社単体で返済できる財務基盤がある
安定した利益やキャッシュフローがあり、借入金が過大でないこと。単に黒字であるだけでなく、返済額に対して十分なキャッシュフローがあるか、一定の手元資金を確保できているかも重要。
③銀行へ適時・適切に情報を開示している
決算報告だけでなく、定期的に試算表や資金繰り表を提出し、業績の変化、今後の見通し、改善策を説明して情報共有。銀行との信頼関係は、継続的な情報共有によって築かれる。
2. 既存借入も保証解除を相談できる
経営者保証の見直しは、新規融資だけの話ではありません。
財務内容が改善したとき、債務超過を解消したとき、借換えや追加融資を行うとき、事業承継を行うときなどは、既存借入の保証解除を相談できる可能性があります。
相談前に、まずは現在の借入を一覧に整理して下さい。
・金融機関名
・借入残高
・信用保証協会の利用の有無
・担保の有無
・経営者保証の有無
その上で、財務内容がどのように改善したのか、今後の返済原資をどう確保するのかを資料にまとめ、銀行へ相談します。保証解除が難しい場合も、「何を改善すれば再検討できるか」を確認することで、今後の財務目標が明確になります。
3. 経営者保証を外せる会社になる
経営者保証なしの融資は、確実に広がっています。
しかし、経営者保証を外すために必要なのは、銀行に強く要求することではありません。先述した、3つの条件をしっかりとクリアすることです。つまり、会社と個人を分け、利益とキャッシュフローを確保し、銀行への情報開示を続けることが肝です。
社長個人の信用に頼らず、会社そのものの信用力で融資を受けられる財務体質をつくることが重要です。一朝一夕で達成できるものではなく、ある程度の時間がかかる取り組みですが、これを着実に行うことがとても重要なことです。
4. 金融機関によって取組状況は異なる
金融庁が公表した2025年度の個別金融機関実績を見ると、新規融資に占める「経営者保証に依存しない融資」の割合には、金融機関ごとに大きな差があります。地方銀行の上位5行は、①北國銀行90.8%、②西京銀行85.0%、③琉球銀行82.8%、④山陰合同銀行82.1%、⑤東日本銀行81.7%で、全国平均の55.7%を大きく上回っています。
ただし、この割合は、融資先の構成や商品内容なども影響するため、この数字だけで保証解除の可否を判断することはできません。取引銀行の実績を確認しながら、自社の財務内容や情報開示の状況を整えたうえで相談することが重要です。
また、経営者保証なしの融資への取組状況は金融機関によって異なります。同じ財務内容の会社でも、金融機関の方針や融資商品、取引経緯によって判断が変わりますので、一つの銀行から経営者保証を求められたからといって、全ての金融機関で保証なし融資が難しいとは限りません。ただし、保証を外すことだけを目的に、安易に取引銀行を変更するのは正しい判断とは言えませんので、お気を付けください。
銀行へ相談する際は、単に「経営者保証を外してほしい」と伝えるのではなく、法人と個人の分離、利益やキャッシュフローの改善の実行、積極的な情報開示をすることが重要です。
保証解除が認められなかった場合は、理由を確認してください。「債務超過の解消」「役員貸付金の削減」「定期的な試算表の提出」など、具体的な要件を確認できれば、次回の相談に向けた経営改善目標になります。
以上、金融庁の資料から経営者保証なしの融資をテーマにお伝えしました。経営者保証を外せる会社のベースは、財務基盤が強く、安定経営ができている会社です。ぜひ、その状態を目指しましょう。弊所は、財務改善のご支援を得意としていますので、ぜひ、お気軽にご相談下さい。