先日、11月28日に政府は、年末・年度末に向けて、運転資金等の需要が高まることなどから、「事業者支援の促進及び金融の円滑化に関する意見交換会」を開催し、経済産業省、金融庁等から金融機関等に対し、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」も踏まえ、中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化と、経営改善・事業再生支援等に万全を期すよう要請しました。同日付で、武藤経済産業大臣、加藤財務・金融担当大臣等から金融機関等に対して要請文が発出されています。
内容としては、大きく2つ「2025年1月以降の中小企業向け資金繰り支援について」と「官民金融機関等に対する要請について」になります。
中小企業向け資金繰り支援について
コロナからの社会経済活動の正常化が進む中、経営上の課題は、売上減少から人手不足・賃上げ・原材料費高騰等への対応にシフトしていることから、各種資金繰り支援策について、経営改善・再生はもちろん、成長促進も含めて、多岐にわたる経営課題に対応できるよう見直していく。具体的な内容は下記の通り。
①コロナ禍で措置した「経営改善サポート保証(コロナ対応)」は、2025年3月まで延長し、その終了後は新たに措置する予定の「経営改善・再生強化型」を活用し、経営改善・再生計画を策定した上での借換を支援。
②能登半島地震の影響が残る地域においては、「コロナ借換保証」を2025年3月まで継続。
③新たに措置する「プロパー融資を引き出す保証制度」により、人手不足に対応する省力化投資など多岐にわたる経営課題に対応した資金繰りを支援。
④日本公庫等の「コロナ特別貸付」は、2024年12月で終了後、その用途の多くが借換えであることを踏まえて新たに創設する「危機対応後経営安定貸付」で支援。小規模事業者に対しては、コロナ前から措置している「小口零細企業保証」を活用し、借換等を支援。
⑤日本公庫等の「コロナ資本性劣後ローン」は、2025年2月まで延長し、その終了後に「通常資本性劣後ローン」について、省力化投資に取り組む事業者を対象に追加する等の見直しを行い、事業者の成長を支援。
⑥資材費等の価格高騰対策として実施している日本公庫等の「セーフティネット貸付」は、2025年3月まで継続
官民金融機関等に対する要請
足下の経営環境の変化を踏まえた事業者の資金調達の円滑化が求められていることを踏まえ、関係省庁とともに、官民金融機関等に対して事業者支援の徹底等が要請されています。
以下、内容を抜粋してお伝えします。
1.資金繰り支援
融資判断に当たっては、機械的・硬直的に判断せず事業の特性、各種支援施策の実施見込み等も踏まえ、経営改善に繋がるよう丁寧かつ親身に対応すること。特に各種補助金等の支給までの間の必要となる資金や賃上げや生産性向上投資等の成長に要する資金等については、事業者の立場に立った柔軟な資金繰り支援を行うこと。日本公庫等においては「セーフティネット貸付」等の活用を促進すること。
2.条件変更、借換え
迅速かつ柔軟な対応を継続すること。金利見直しの協議に際しては、必要に応じて適切な返済計画のアドバイスを行うこと。
4.経営支援
資金繰り支援に留まらず事業者の実情に応じた経営改善、事業再生支援、再チャレンジ支援等に早め早めに取り組むこと。
5.経営者保証
経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けて、「経営者保証改革プログラム」を一層の浸透・定着を図ること。民間金融機関においては、 M&A、事業承継などを金融機関が把握した場合には、経営者保証の解除に向けた見直し及び事業者等への説明を着実に実施すること。既往の経営者保証契約について、対応可能な範囲で監督指針に沿った説明や記録を行うこと。信用保証付融資に関しては、事業者のニーズに応じて、「事業者選択型経営者保証非提供制度」の活用を積極的に検討すること。
6.他の金融機関や支援機関との連携
メイン・非メイン先の別、既存顧客・新規顧客の別、プロパー融資・信用保証付融資の別等に関わらず継続的な伴走支援に努めること。 プロパー融資と信用保証付融資とを組み合わせた協調融資制度を新たに措置する予定であり、民間金融機関及び信用保証協会においては事業者のニーズに応じて当制度を積極的に活用することにより、経営課題に対応した資金需要に着実に応えていくこと。
8.手形等のサイト短縮に取り組む事業者への支援
令和6年11月から下請代金支払遅延等防止法における手形等のサイト短縮に係る新たな指導基準の運用が開始されたが、同法の対象とならない取引も含め、手形等のサイトの短縮に取り組む事業者に対しきめ細かな資金繰り支援に努めること。